「看護師の円満退職」完全ガイド~手続きの流れと退職理由の伝え方・タイミング~
PR「経験が浅いのに、転職できるはずないでしょ!」って。
看護師の退職にまつわる悩みはたくさんあります。
「退職の理由をどう言えばいいのか分からない」
「師長に申し出るのが怖い」
「人手不足なので退職を認めてもらえないかも」
「ほかの看護師に退職することを知られたくない」
「具体的にどういう手順を踏めばいいのか分からない」
これらの悩みは、
①入念な準備 → ②こじらせない申し出 → ③美しく去る
の3ステップで解決しましょう。
看護師が円満に退職するための方法をご紹介します。
<ステップ①入念な準備>退職の準備をする
退職を決意する
「なんとなく辞めたいけど―」
「師長の反応を伺って―」
「ほかの看護師の退職動向を見て―」
といった、あやふやな意思は退職をこじらすもとです。
まずは、しっかりと「退職する」という自分の意思を固めましょう。
転職の時期とその後の予定を考える
●すぐに転職するのか、ブランクをあけるのか
- いつ頃退職するのか
- 退職した後、すぐに転職するのか、ブランクをあけて再就職するのか
- ブランクをどのくらいあけるのか
を考えておきましょう。
転職の時期をどうすべきか、在職中の転職と退職後の転職はどっちがいいのかの判断は人によってさまざまです。
自分のこれからのプランを考えてから、退職に臨みましょう。
●どういう分野に転職したいのか
- 専門や特性が異なる病院に転職したいのか
- 介護分野に転職したいのか
- 看護師以外の仕事に就きたいのか
を考えておきましょう。
病院以外の仕事や看護師以外の仕事とった別分野では、特に情報収集が不可欠です。
看護師転職サイトなどを使って充分に情報収集し、転職先(分野)の求人状況や募集期間を調べておきましょう。
●退職後の生計を考えておく
退職後、すぐに転職しない場合は、その間の生計をどうするのかを考えておきましょう。
- 退職金はあるのか(どのくらい?)
- 失業手当を受給するのか
- 預貯金はあるのか
なぜ、こうした事前の準備が必要かというと、退職をこじらせないためです。
準備が甘いと、師長に退職を申し出る際に、必ずスキをを突かれます。
退職の理由を考える
ですね。ホントにそうならいいんですけど、嘘ついて辞めたくないですよね。
かといって、理由が明確ではないと、そこを突いて師長が引き止めてくるので、「退職をこじらせないための退職理由」が必要なんです。
「退職をこじらせないための退職理由」とは、分かりやすく言うと、「申し出用の理由」です。
明らかな嘘はマズイですが、退職するときに「本当の理由を言わなくてはいけない」という決まりはありません。
できるだけ円満に退職することを第一に考え、前向きで誰も傷つけない理由を準備しましょう。
- 別の分野(専門)の経験を積みたい
- 〇〇の資格を取りたい
というキャリアアップ系の理由がベストです。
有休を計画消化しておく
有休がたくさん残っていても、退職直前の一括消化は難しいことを織り込んでおきましょう。
退職間際になって「有休が残っているから休みます!」と強行な態度を取ると、師長だけでなく、他のスタッフとの関係もギクシャクしてしまいます。
退職を決意したら、早めに少しずつ有休を消化していきましょう。
<ステップ②こじらせない申し出>退職を申し出る
職場の規定を確認する
まずは、職場の就業規則で、
- 退職の申し出方法
- 申し出の期日
を確認しましょう。
ダメです!先輩や同僚からの不確実な情報でしくじる人も少なくありません。
必ず自分の目で、就業規則を確認しましょう。
退職の申し出時期を決める
就業規則で退職の申し出期日を確認したら、その期日の1ヶ月~3ヶ月前に、師長に退職の意思を伝えるようにしましょう。
例えば、退職の申し出期日が退職日の2ヶ月の場合、遅くとも退職の3ヶ月前には退職の意思を伝えましょう。
ちなみに…民法では「2週間前までに退職の申し出をすれば退職ができる」と定められています。就業規則よりも法律を優先するという主張が一般的なようですが、円満退職のためには就業規則に従った方が無難でしょう。
●退職の意思を伝えるのが早すぎるのはダメ
就業規則に関係なく「退職を告げるタイミング」というのは本当に大事です。
よく「来年の3月に辞めます」とか、「ボーナスをもらって辞めます」とか、かなり先の退職を予告して早めに退職の旨を伝える人がいますが、これはタブーです。
そうですよね。それにそんなに先なら師長も引き止めやすいですし、「考え直したら?」と言われてグダグダになる可能性が高いです。
波風立てず、かつ個人的な退職理由がより説得力を増すよう、退職を告げるタイミングには気をつけましょう!
師長(または申し出先)のアポを取る
「ちょっとイイですか―」や、何かのついでの申し出は論外です。
また、ものすごく忙しいときや、インシデントや患者クレームなどのトラブルの対処時期も避けましょう。
少し改まり気味に、
「ご相談があるのですが、今週どこかでお時間を作っていただくことは可能でしょうか?」
と申し出ましょう。
退職を申し出る
ココが最大の山場、最もしくじりやすいところです。
いきなり退職届を出すのではなく、まずは退職の意思を伝えます。用意した「申し出用の理由」と、「退職の時期」を伝えましょう。
そして、考えておくべきことは、引き止めへの対処です。
●引き止めの対処法
看護師が退職を申し出ると、引き止められるのが普通です。
「あなたがいなくなると困る」
「残された看護師の気持ちを考えて」
「異動や役割の変更をするから考え直して」
「あなたの希望に合った勤務形態にする」
「新卒が入る4月まで待ってほしい」
などなど…退職理由に合わせて様々な引き止めの文句が繰り出されるはずです。でも、ここで気持ちが揺らいではあなたの負けです。せっかく勇気をもって退職を伝えたんですから、諦めて引き下がってはいけません。
そもそも、就業規則に従って早めに退職の申し出をしているのですから、一方的に却下されるいわれはありません。
諦めない。
これが大事なポイントです。辞めるという強い気持ちがあるなら絶対に粘ったほうがいいです。
そんなことはありませんよ。引き止められて気持ちが揺らいでいると思われたら、それこそ相手の思うツボ。足元を見られてうまく言い含められてしまいますよ。
それに、辞めたいという意思を伝えた人は、引き止められて仕事を続けたとしても信頼を無くすのが普通です。また、「この人は辞める辞めるって言うけど辞めない人間なんだな。言ってることとやってることが違う人なんだな。」と嘘つきな人間だと思われてしまうかもしれません。
ですから、一度「辞める」と言ったら絶対退職しましょう!
ただ、師長の性格や病院の事情で、強い引き止めにあってうまくいかないこともあります。その場合はどうしたらいいのでしょうか?
●うまくいかない場合は次のステップへ進む
一方的な拒否、脅し、泣き落とし…
強い退職の意思をもって申し出たとしても、さすがにこれでは話になりません。
ですが、仮に退職の許可が出なかったとしても、退職の申し出というのは、本来「師長の許可を得る」ことが目的ではありません。
「退職の意思を伝える」という目的を果たせたと割り切って、次のステップに進みましょう。
●転職先は伝えるべき?
転職先がすでに決まっていて退職を申し出る場合、自分からあえて転職先の話をする必要はありませんが、師長から聞かれた場合は、転職先がすでに決まっていることを正直に伝えるべきです。
そうですね、心配をかけないために誠実な対応をしましょう。
退職届を準備する
申し出の手ごたえはどうであれ、退職の決意がゆるぎない場合は、正式な申し出のための「退職届」を準備しましょう。
●退職届?退職願?どちらを出すの?
退職届は、文字通り「退職します」ということを届けるものです。
一方、退職願は「退職してもいいでしょうか?」という、お伺いを立てるものです。
就業規則にどちらを提出と定められていますが、基本的には「退職届」と理解しておきましょう。
●退職届の書き方
職場で様式やフォームが決められている場合は、それに従って書きます。
以下、一般的な退職届の書き方です。
- 縦書きが基本
- ボールペン、サインペン、などの直筆で丁寧に書く
①1行目に「退職届」と書く
②2行目の下のほうに「私事」または「私儀」と書く
「私事」や「私儀」は、わたくし事で恐縮ですが、という意味の「へりくだり」を表しています。そのため下に記載します。
③(一行あける)本文を書く
「このたび一身上の都合により、来る平成○○年△月××日をもって退職いたします」
いかなる理由であっても、「一身上の都合」と書きます。
④(一行あける)提出日付を和暦で記載する
届け出の日付は、就業規則の提出期限に従って記載します。
3月31日退職で、提出期限が2ヶ月前の場合は、1月31日となります。
⑤(改行して)「所属部署」と「氏名」を記載し、氏名の下に押印
⑥(一行あける)「会社(病院・施設)の正式名称」と「院長または理事長の名前」を書く
退職届は誰宛に書くのかを確認しておきましょう。
氏名に漢字の間違いがあると大変失礼にあたります。正式な人名漢字を調べておきましょう。(例:安部→安倍、阿部など)
●退職届の提出の仕方
退職届は三つ折りにして封書に入れ、表側に「退職届」と書きます。
裏側に所属部署と氏名を書き、糊付けして師長または指定の提出先に、提出します。
日付や宛名の間違いなどの不備があると、退職届は受理されず再提出となる場合があります。
再提出になると、当初の期日では退職できない場合もあるため、くれぐれも不備のないように提出しましょう。
退職届の受け取りを拒否されたら
退職届の受け取りは、職場は原則拒否はできません。
しかし、師長が巧みに受け取らないケースもあります。
看護師の退職で、労働基準局や弁護士等に相談するほどのトラブルはレアケースですが、退職の交渉がこじれそうな場合は、相談に備えて記録を全部取っておきましょう。
- いつ師長に退職の意思の申し出をしたか
- どういう返事であったか
- いつ退職届を提出したか、提出の方法、受取の状況など
<ステップ③美しく去る>退職が正式に決まったら
退職届が受理されれば、退職は正式決定です。
しかし、職場内での公表は事情により遅れることもあります。
引継ぎや周囲への公言は、職場内での発表後に行うようにしましょう。
業務の引継ぎ
受け持ち患者さんや、委員会の仕事などの引継ぎを行います。
勝手に仲のいい人に引継ぐのではなく、職場が決めた後任者に引継ぎをします。
退職が決まったからといって、浮かれない
退職するからとって、言いたいこと言いまくったり、退職を理由に仕事を勝手にセーブしたりすることは、最もやってはいけないことです。同僚に白い目で見られますよ…!
退職する日(最終勤務日)まで、普段と変わりなく仕事をして退職を迎えるのが一番いい辞め方だと思います。
最後の最後まできっちりやって、嬉し涙でお別れしましょう。
退職日(最終出勤日)に行うこと
支給・貸与されているものを返却
●健康保険証の返却
退職に伴い、現在の健康保険からは脱退します。保険証は職場に返却しましょう。
●白衣や備品の返却
白衣や備品で私物以外のものは、職場への返却が必要です。
名札や社員カード、更衣室のカギなども忘れずに返却しましょう。
●情報は一切持ち出し禁止
患者情報はもちろんのこと、職員情報も一切持ち出しはできません。
業務マニュアルや研修会、勉強会の資料も、原則持ち出し禁止です。
必要な書類の確認と受け取り
すぐに転職するか、ブランクをあけて失業手当を受給するかなどによって、退職後の手続きで必要な書類は異なります。
何が必要かを確認しておきましょう。
●離職票(雇用保険被保険者離職票)
失業手当の手続きに必要な書類です。退職後に郵送で受け取る場合もあります。
●雇用保険被保険者証
雇用保険の被保険者であることを証明する書類です。再就職時に、職場に提出します。
●源泉徴収票
転職先での年末調整、または自己での確定申告に必要な書類です。
●年金手帳(職場預かりの場合)
公的年金の加入者であることを証明する手帳です。転職先への提出または自己管理しておきましょう。
●健康保険被保険者資格喪失証明書
健康保険の資格喪失を証明するもので、次の健康保険の加入手続きに必要です。
挨拶回り
最後はきちんと挨拶をして、美しく去りましょう。
院長、看護部長などのお偉いさんはもちろんですが、所属部署だけでなく、関係部署にも挨拶を行います。
砕けた雰囲気になりがちですが、あくまでも仕事の場であることを忘れずに、時間を取りすぎないようにしましょう。
担当が変わることに不安を感じる人もいるため、どうすべきかは師長に相談して判断しましょう。
将来のために円満退職をするという考え方
ここまで、円満退職の方法についてお話させていただきましたが、いかがでしたか?
円満に退職するメリットは、退職をするときだけではありません。実は将来の自分にも関わってきます。
例えば、「昔の職場の同僚と友人関係が続く」といったプライベートの面でのメリットや、元いた病院での人脈を保つことで「好条件での引き抜きの話」や「新規立ち上げの誘い」など、将来自分のキャリアにとっても有利に働くんです。
迷惑をかけずに気持ちよく退職をするためにも、将来のためにも、
の3ステップで円満に退職して、次の1歩を踏み出してくださいね!
人気記事ベスト5
この記事を読んだ人は以下も読んでいます
登場人物
のんびりな性格の新人ナース。2人の姉の影響で看護師に。色々なことに疎く、生き方もなぁなぁ。
キャリア志向のナース。趣味はセミナー巡り。大の血管好きで血管愛好家という一面も。
仕事と子育ての両立に励むママナース。2児の母。三姉妹の中で最もおっとりした性格。
みんなに愛されるダンディな開業医。頭から生えてきた額帯鏡がチャーミング。
仕事も男も経験豊富なベテラン看護師。数多の男を落としてきた美脚は今なお衰えていない。
犬か猫かどっちか分からない正体不明のペット。自分もナースだと思い込んでいる。