【心臓血管外科とは】循環器内科との違いがよくわかる!心臓血管外科ガイド
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確かにほんの少し前までは外科でしか治せなかった疾患も、カテーテル治療や内服治療の進歩で循環器内科で適応できるようになってきています。
さて、それでは心臓血管外科の出番はどこにあるのでしょう。
そうなんです。いかに循環器内科が発展しても、心臓血管外科が無ければ治せない病気はまだまだたくさんあります。
心臓血管外科とはどのような診療科か、また心臓血管外科への転職に興味を持っている看護師さんに参考になるような予備知識をご紹介します。
今回は看護師の仕事内容には触れていませんので、仕事内容が気になる方はこちらを参考にしてください↓
心臓血管外科とは
心臓血管外科とは、文字通り心臓と血管に対する外科手術を行う診療科のことです。
血管は全身に波及しており、冠状動脈・腹部や胸部大動脈のような大血管から、四肢静脈まで心臓血管外科の対象です。
心不全などで下肢自体が浮腫んでいるという状態は、環器内科での内服や点滴治療になります。
しかし、同じように下肢が浮腫んでいる状態でも、瘤などが出来てしまってメスで血行を再建しないと治療にならない時は心臓血管外科の適応です。
症状が同じでも、何が原因か・どのように治療するかで内科か外科かが決まってきます。
心臓血管外科の現状
初診の患者が、心臓血管外科に患者自身の判断で来ることはほとんどありません。息苦しさや浮腫み、胸の痛みなどで受診するのはほとんど循環器内科です。
心臓血管外科へは、循環器内科で対応できない・適応では無い患者が紹介でくることが多いでしょう。
そうですね。しかし、依然としてカテーテル治療では手を出せないような狭心症や心筋梗塞もあります(詰まった部位や距離による)。また、合併症が多くて外科手術の方がむしろ安全なケースもあります。
心臓や血管の疾患に対して、内科の薬物治療と外科手術を絡めて治療することが必要なこともあります。そういった患者が、内科からの紹介で外科にくることになるんですね。
これから先も、循環器内科と心臓血管外科は互いに協調して進歩していくことが求められるでしょう。
心臓血管外科に来院される患者層の特徴
●先に循環器内科や他院で初期治療を受けている
内科の薬物治療やカテーテル治療では治せない、またQOLを維持できない患者が内科から紹介されてきます。また他院では対応できない患者が、紹介で来ることもありあます。
いずれにしろ内科や他院を通っていることで、患者は自分の疾患にある程度理解があります。患者は転科や転送になったことで期待と不安を持っていることでしょう。
看護師は転科や転送に対する患者や家族の気持ちに、寄り添えるようにしたいですね。
●本人と共に家族や周囲との協調が大切
患者層は高齢者か、逆に若年層が多くなります。何とか頑張ってきた心臓も自身が高齢になり発症した症例や、先天性に疾患を抱えている症例が多いためです。
この患者層の特徴として、本人だけでは治療について決められなかったり、治療についていけないことも少なくありません。患者本人だけでなく、家族や周囲との協調が大切なのです。
心臓血管外科でおこなう主な手術例
心臓は激しく動き続ける臓器です。ここに、心臓血管外科の手術の大きな特徴があります。
心臓血管外科は人工心肺を使う
何か繊細な作業をする時、対象が動き続けていたらやりづらいですよね。激しく動く心臓にメスを正確に入れるのも至難の業です。
そこで、心臓血管外科の手術に関しては人工心肺装置、つまり一度心臓の動きを止めて人工の心臓に代替させて手術をする手法が使われてきました。
この装置へのスムーズな移行と離脱は、心臓血管外科手術の大きな要素です。
手術中に主に関わる臨床工学士にも「体外循環技術認定士」という資格ができています。それだけ人工心肺に関して慎重さを要するということですね。
人工心肺を使わない手術
人工心肺を使用中、保護はしていても生きた心臓を長く止めておいて良いことはありません。長くなれば血栓形成などのリスクも高まります。
スムーズな心臓の再循環のためには、できるだけ心臓を止めていた時間を短くすることが考えられてきました。心臓の中を綺麗に手術しても、再循環しなくては意味がないのです。
なので、最近は人工心肺を使わないで心臓を稼働させたままで行う手術や、一部だけ人工心肺に代行させる部分体外循環という手法も取り入れられ研究も進んでいます。
心臓血管外科へ採用された時は、この神業を見ることができますよ。
心臓血管外科の主な手術例
●虚血性心疾患
主な病名は狭心症・心筋梗塞・心室中隔穿孔・心破裂などになります。
カテーテル治療ができない症例に対して、「冠状動脈バイパス術」などを行います。
細く詰まってしまった血管に対し、人工の血管やその患者自身の血管(下肢の血管などを使う)を使って、他の血行路=バイパスを作って必要な個所の血流を取り戻そうという手術です。
●弁膜症
心臓の中の弁が狭窄して血液の流れが悪くなったり、弁自体の動きが悪くなって血液のうっ滞が起こったりする弁膜症の手術も心臓血管外科のメインです。
主に大動脈弁と僧房弁に対して、生体弁や人工弁に取り換える(置換術という)などの手術を行います。
人工弁は体にとっては異物となるので血栓形成や感染の危険があり、生涯にわたり抗凝固剤を服用しなければなりません。人工弁を入れた後に出産や他の手術などが必要になった時のリスクは高く、看護師は生活上の注意点についてもよく説明する必要があります。ただ生体弁に比べ耐久性があります。
生体弁は異種生体弁・つまり違う動物から作られたものになります。主にウシの心膜、ブタの心臓弁などが利用されています。抗凝固療法は3か月ほどの内服で済むことが多いですが、耐久性が劣り一定の期間で再手術が必要なこともあります。
どの弁を選ぶかは患者のライフスタイルや年齢、考え方に直結するものです。看護師は、選択後の患者の生活がスムーズにいくように一緒に設計していかなくてはなりませんね。
●メイズ手術
心房細動に関する手術です。心房細動に関しては、カテーテルによるアブレーション(側副血行路を焼く)が適応範囲を広げています。
外科では、アブレーションでは効果が無かったり再発を繰り返したりする症例や、心房細動による血栓で血栓塞栓症を起こしている症例などが適応になります。
●大動脈疾患
大動脈の病変に関しての手術で、時として一刻を争う緊急手術もあります。急性大動脈解離や大動脈瘤の破裂などは救命措置を行いながらの手術となることも少なくありません。
元々大動脈瘤が発見されている場合は、その直径や拡大速度で手術の適否を決めます。
冠動脈から繋がる大動脈の始点から胸部~腹部へかけての大動脈は長く、栄養している臓器も多々あるため、瘤のある場所によって術式は変わってきますし考えられる合併症も変わってきます。
●先天性心疾患
主に心房や心室の中隔欠損症、ファロー四徴症など生まれつきの心疾患に対する手術です。なので、小児など若年層への手術になることが多く、小児心臓血管外科での適応が多いでしょう。
先天性心疾患ではその疾患の治療のみならず、先に長い将来がある小児の生活を考えなくてはなりません。手術そのものだけでなく、その子どもが未来向かって行けるかどうか、それも含めて成否を判断する必要があります。
●重症心不全
重症心不全に対する根治術は心臓移植です。しかし、移植心臓を待つことも費用も決して簡単なことではありません。
現在、心不全に関しては薬物療法が主体です。そのほかに心臓のポンプとして押し出す力を高めるための、ペースメーカを入れる手段もありますが、すべての心不全に適応するとはまだいえません。
心不全に対する外科治療は、その適否を含めて非常に慎重に考慮されます。
また、拡張型心筋症などは心臓の筋肉そのものの病気なので、そのような場合は心臓のサイズを小さくするバチスタ手術などが適応ですが、リスクも高く慎重な選択が必要です。バチスタ手術自体は名称も変え、盛んに研究されていますが依然として難しい手術の部類に入ります。
心原性のショックに陥った時は補助人工心臓という手段があります。
補助人工心臓をつけたままで自宅での生活を送ることができる可能性があり、海外ではすでに臨床での応用が増え日本でも臨床試験が始まっています。
心臓血管外科の魅力
心臓血管外科は、以前よりずっと難しい症例を対応するようになってきています。
看護師の役割もかなり専門的になり、勉強しなくてはいけないことも多いでしょう。
しかし、心臓血管外科には循環器疾患の最後の砦としての役割があります。これは患者や家族にとっても希望であり、心臓血管外科の大きな存在意義となっています。
心臓血管外科への転職を考えている方へは、確かに簡単な診療科では無いかもしれませんがこのように魅力があることをお伝えします。
求人募集は内科ほど多くは無いですが、よく吟味してぜひ循環器の最後の砦の一人になってくださいね。
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登場人物
のんびりな性格の新人ナース。2人の姉の影響で看護師に。色々なことに疎く、生き方もなぁなぁ。
キャリア志向のナース。趣味はセミナー巡り。大の血管好きで血管愛好家という一面も。
仕事と子育ての両立に励むママナース。2児の母。三姉妹の中で最もおっとりした性格。
みんなに愛されるダンディな開業医。頭から生えてきた額帯鏡がチャーミング。
仕事も男も経験豊富なベテラン看護師。数多の男を落としてきた美脚は今なお衰えていない。
犬か猫かどっちか分からない正体不明のペット。自分もナースだと思い込んでいる。