血液内科の看護師って何するの?〜基本の仕事内容と専門的な役割〜
PRまこ
虫歯はともかく、血液内科って一体どんな事をしているのか、未知数なところがありますよね。
今回はそんな血液内科で働く看護師の業務内容を、血液内科一筋の私の経験を基にお伝えします。
まず血液内科だからと言って、看護の業務内容が特別なわけではありません。基本的にはベースとなるバイタルサインのチェックから、患者の身の回りのお世話です。
無菌室での看護が多く、患者も易感染状態の人が多いので、感染予防行動は十分にとらなければいけません。それに加えて、血液内科特有の検査・処置・治療に対する診療の補助をする事になります。
検査・処置と看護
骨髄穿刺(マルク)
まず、診断する上で必須となる骨髄検査(骨髄穿刺)、通称「マルク」です。胸骨あるいは腸骨に局所麻酔をかけて、穿刺針を刺し、注射器で一気に骨髄液を吸引します。
この吸引する時、時間にして3秒〜5秒ほど(骨髄液の引けるスピードにより差が出ます)ですが、激痛が伴う事が多いです。
骨髄生検
骨髄液だけでなく、組織も必要となれば、生検を行います。穿刺針より更に太い5ミリほどの生検針を刺して組織をグリグリとこそぎとるので、言うまでもなく
です。
物品の準備、医師の介助はもちろんですが、患者の痛みへの看護、不安の緩和を図ることが重要なポイントとなります。
腰椎穿刺(ルンバール)
脳脊髄液を調べる検査です。エビのように身体を丸め、横になった姿勢で、背中の脊髄の間に針を刺して脳脊髄液を採取します。
脳脊髄液はゆっくりポタポタと出てくるので、針を刺してから抜くまでの時間が1分〜5分ほどかかります。
髄注
腰椎穿刺と同じ手順に加えて、最後に治療となる薬(メソトレキセートなど)を脊髄に注入します。
薬剤も10ccを1分ほどかけてゆっくり注入します。
中心静脈ルート挿入(CVカテーテル・CVポート・PICCカテーテル)
血液内科の治療ではほとんどの患者が抗がん剤治療を行います。故に抗がん剤が血管外へ漏れてはいけません。
抗がん剤以外でも高カロリー輸液を投与する必要がある場合など中心静脈ルートが必要です。なので、半分以上の患者が挿入されています。
放射線療法主体の治療であったり、抗がん剤の種類によっては末梢ルートから投与するものもあるので、患者全員に中心静脈ルートが入っているわけではありません。ですが、血液内科において中心静脈ルート挿入の介助は頻繁に行う看護業務の一つです。
ルートの種類によっても挿入部位は異なりますが、頸静脈に挿入する場合顔全面にガウンがかけられます。
検査・処置一つにしても、患者とのコミュニケーションを図り、信頼関係を築くツールとなります。
治療と看護
輸血
「血液」内科、と言うからには言うまでもなく輸血はつきものです。
多ければ1日20件以上の輸血を実施する事もあります。オペ室・ICUを除けば、間違いなくどの科よりも多く輸血業務に携わるでしょう。
輸血の種類は赤血球輸血(通称RCC-LR又はMAP)に血小板輸血(PC)が主です。それぞれ副作用の特徴が違うので、それを理解しながら実施・観察しなければなりません。
輸血手順においては、病院によって異なります。開始は医師が行う所もあれば、看護師で実施する所もあります。
輸血業務では、確実な投与と、異常の早期発見・対応が求められるので、観察・確認が重要と言えます。
化学療法
治療のベースとなるのがこの化学療法です。血液のがんですから、外科のようにオペで病巣を除去する事は出来ません。内科的治療の基本とも言える化学療法。その種類も多く、ザッと25種類ほどの治療法があります。
看護師は医師が指示した化学療法のレジメンを基に、決まった時間に投与するのが仕事です。
移植
血液内科の中で、最もスタッフの力が試される治療とも言える骨髄移植。同種骨髄移植や自家末梢血幹細胞移植、臍帯血移植などその種類も様々です。
移植を受ける患者の看護は化学療法を受ける患者の看護の延長とも言えます。より観察点や注意点が多くなりますが、ここでも家族を含めた患者の精神的サポートが重要になります。
移植カンファレンス資料の作成
移植が適用される患者には、予め何度も移植前にカンファレンスを行います。看護師は患者の移植に対する思いや、経済面、生活面、家族のサポート体制などを把握しまとめます。
移植カンファレンスには、移植に関わる様々な職種が参加し、それぞれまとめた資料を発表する形となります。
このカンファレンスで看護師は患者の立場を代弁するかのごとく、移植への意志や不安な思いなどを他者に伝える任務があります。
副作用と看護
治療を確実に投与する事と同等、いやそれ以上に重要なのが患者の精神的サポートです。
脱毛しない種類もありますが、ほぼ必ずと言っていいほど化学療法では副作用に脱毛が起こります。
脱毛し始める前から、脱毛中、剃毛した後に至るまで、患者が髪の毛が抜け落ちた事への受容が出来るまで精神的サポートが大切です。
また、副作用として嘔気・嘔吐があります。嘔吐・嘔吐への看護はもちろんのこと、副作用に耐えられるメンタルをサポートする事が重要です。
血液内科のある1日
9時〜17時の勤務とした場合のスケジュール例
- 08:00 出勤 担当患者のカルテチェック
- 08:30 全体ミーティング、個別に患者の申し送り
- 09:00 担当患者の朝のバイタルチェック
- 10:00 入院患者の部屋まわり
- 11:00 化学療法・点滴準備と実施
- 11:30 入院患者の骨髄穿刺・CV挿入の介助
- 12:00 昼休憩
- 13:00 昼のバイタルチェック
- 14:00 入院患者のムンテラ
- 15:00 担当患者の輸血実施
- 16:00 申し送り 記録記入
- 17:00 勤務時間終了→残った看護記録などの作業
例に挙げるとこんな感じで、常に動き回って空いた時間にケアやカンファレンス、その他諸々の仕事をこなすようになります。
血液内科が他科と違う最大の点は患者の入院日数の長さです。(精神科を除く)
がんの平均入院日数が19.5日なのに対し、血液内科では1クールの入院治療に約1カ月を要します。
その治療が何クールもあり、入退院を繰り返す事、言わば何度も同じ患者と接する機会があると言う事です。移植においては、スムーズに経過しても移植入院から退院まで約3カ月かかります。
そうした在院日数の長さから必要になるのが
コミュニケーションを過不足なく取りながら、信頼関係を築く事こそが血液内科で働く看護師の重要任務です。
仕事内容まとめ
以上をまとめると、
- 感染予防行動と患者指導
- 検査・処置の介助
- 輸血・点滴の実施
- 移植患者の観察とケア
- 患者及び家族のメンタルヘルスサポート
を日々行う科です。
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もっと詳しく血液内科が知りたい方は下記の記事をご覧下さい。
さぁ!あなたも血液内科の看護師への転職いかがですか?
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登場人物
のんびりな性格の新人ナース。2人の姉の影響で看護師に。色々なことに疎く、生き方もなぁなぁ。
キャリア志向のナース。趣味はセミナー巡り。大の血管好きで血管愛好家という一面も。
仕事と子育ての両立に励むママナース。2児の母。三姉妹の中で最もおっとりした性格。
みんなに愛されるダンディな開業医。頭から生えてきた額帯鏡がチャーミング。
仕事も男も経験豊富なベテラン看護師。数多の男を落としてきた美脚は今なお衰えていない。
犬か猫かどっちか分からない正体不明のペット。自分もナースだと思い込んでいる。