【看護師の休職マニュアル】休職方法・休職中の給料・復帰と転職の選択肢について
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いえ、もう一つの選択肢がありますよ。
「休む」という選択です。
職場には通常の指定休のほかに、年休や福利厚生による休暇制度があります。
さらに、もっと長期に休むことを必要とする場合の「休職制度」を設けている職場があります。
今回は、看護師はどのようなときに休職できるのか?その方法は?お金は?復職や転職はどうなるの?といった、休職のあらゆる疑問にお答えします。
看護師はどういうときに休職できるの?
「休職」とは、職場に籍を残したまま、一定期間仕事を休む状態を指します。
職場側の指示または、労働者側からの申請によって「休職」となりますが、この休職制度は、労働基準法上必ず設けなければならない制度ではありません。
あります。また、
- どういうときに休職できるのか?
- 休職の期間は?
- 休職中の給料は?
といった制度の仕組みも職場ごとにさまざまです。
看護師はどんな理由で休職する(している)のか
看護師は、
- うつや適応障害などメンタルヘルス不調
- (うつ等以外の)長期に療養が必要な病気
- 資格取得(専門看護師・認定看護師)や留学
などの理由で休職しています。
このなかでも、最も多いのは「うつや適応障害」などのメンタルヘルス不調による休職です。
うつの状態では、何か大きな決断をするのは避けたほうが良いとされます。
「退職」という判断を保留する意味でも「休職」という選択はアリです。
休職制度が職場で任意に設ける制度に対し、産休や育休などの「休業」は、法律(育児・介護休業法)で定められたものであり、職場では必ず設けなければならない制度です。
また、労働災害や通勤災害での休職は、「労働基準法」や「労働者災害補償保険法」で定められているものです。
法律で定められている休業期間を過ぎても休みが必要な場合、「休職」に切り替えて休みをとるケースもあります。
職場の休職制度を確認
うつや病気で「休職」できるのか、育休や介護休暇を延長しての「休職」や、資格取得に関する「休職」に対する制度が職場にあるかどうかを確認しておきましょう。
一般的に、大きな職場ほど充実した休職制度を設けています。
小規模病院や施設、クリニックでは、就業規則に休職制度に関する記述がないところもあります。
その場合は、個別に交渉し条件をきめて「休職」を取ることも可能です。
ですよね。職場の休職制度については、「就業規則で確認を」と言いたいところですが、特にうつなどの場合は、そのような余裕はないでしょう。
ここでは、うつなどのメンタルヘルス不調による休職を中心にした一般的な休職の方法を説明しましょう。
休職をするための方法と流れ
休職の前に「休む」
休職は、いきなり休職に入るのではありません。
一般的には、1ヶ月程度の「休養」は、指定休や有休+病欠(欠勤)として処理されます
職場に休職を申請する
有休や病欠で休みをとったけど、症状が改善しない場合や、もう少し時間がかかりそうな場合には「休職」を申請します。
休職の申請には、
- 就業できない理由
- 休職の見込み期間
が記載された「医師の診断」の提出が求められます。
●医師にかかっていない場合は?
うつやストレス性疾患で、医師の診断書なしに休職を取ることは困難です。
休職の申請だけでなく、症状を緩和、改善するためにも、まずは、専門医の診察を受けましょう。
労災の場合は、労災として認められるか申請の後に判断されます。
看護師の労災には、勤務中のケガや腰痛、院内感染、針刺し事故などがありますが、近年では、うつ病などの精神疾患や、心疾患などに対しても、パワハラや過重労働との因果関係を認め、労災認定されるケースもあります。
看護師の休職に関する疑問~休職の申し出について~
Q1.休職したいときは、誰に相談すればいいの?
まずは、主治医や職場の産業医に相談しましょう。
「就業可能か」「このまま仕事を続けたらどうなるか」といったことを、専門的に判断してもらいましょう。
日頃の関係や、休職を考える理由によるでしょうね。
日頃の関係が微妙な師長に相談すると、人手不足や欠員を理由に「休職できない」と言われたり、「キャリアに傷がつく」と言われてしまうこともあります。
また、家族は心配がゆえに感情的な意見を言ってしまうことがあります。
Q2.休職は誰に申し出ればいいの?
原則として所属の長、つまり師長に申し出ます。
そうです!休職に至るストレスの原因が「師長」にあるケースも少なくありません。
その場合には、看護部長や院長、人事課の長などに届け出るか、または職場の産業医に相談しましょう。
●師長に「休職はムリ」と言われたら?
主治医の診断書と本人の申し出があれば、職場は休職を拒否することはできません。
また、「〇月からなら」や「〇日間だけなら」という条件付きで許可することもできません。
師長への申し出でこじれるようであれば、看護部長や院長、人事課の長など、相手を変えて申請しましょう。
Q3.申し出の方法は?
職場での届け出ごとは、自身が直接行うに越したことはありませんが、うつなどのメンタルヘルス不調の場合は、職場に出向くこと自体が困難になることもあります。
また、年休や病休ですでに休みをとって入院していたり、職場から離れた実家に帰省して静養しているケースもあります。
こうしたケースでは、郵送や代理人による申請方法をとることも可能です。
●休職中の身分保障と処遇の確認
「就業規則」には、
- どういう場合に休職できるのか
のほかに、
- 休職中の給料について(無給か、一定の補償があるのか)
- 休職中の通院と職場への報告について
- 休職期間は勤続年数に換算されるか
- 復職について
- 休職期間満了後復職できない場合の取り扱いについて
などが記載されており、これについて担当部門(人事課・庶務課等)から説明があります。
不明な点があれば、体調が落ち着いた段階で確認しましょう。
看護師の休職に関する疑問~休職中の過ごし方について~
Q1.休職期間はどのくらい取れるの?
●症状や病状による
うつなどのメンタルヘルス不調による休職の場合、提出した診断書に記載されている期間が休職期間の見通しになります。
休職期間中に症状の改善が見られない場合は、再度診断書を提出し、休職期間を延長することができます。
●休職日数の上限は、職場ごとに定められている
ただし、無制限に休職期間を延長できるものではありません。
休職期間の上限は、「就業規則」で定められています。
同じ理由による複数回の休職の場合は、休職日数を「合算する」と定めているところもあります。
また、勤続期間によって休職日数の上限を変えている職場もあります。
一般企業を例にみると、就業規則で定める休職期間は、
大企業の場合 | 1~2年 | 中小企業の場合 | 半年程度 |
---|
となっています。
Q2.休職中は何をして過ごすの?
休職中には「コレをしなければならない」ということはありません。
休職直後は、まずしっかりと身体を休めることです。昼夜規則正しい生活を送り、睡眠を充分にとりましょう。
仕事や今後のことは、睡眠がきちんととれるようになってから考えるべきです。
食事もバランスよく食べ、体調が回復し、「運動したいな」と思った段階で適度な運動(ウォーキングなど)を始めましょう。
もちろん構いませんよ。
ただし、ダラダラとした生活や昼夜が逆転してしまうような生活は、心身の回復にはマイナスということは知っておきましょう。
Q3.休職中の通院は?
休職期間中も主治医の指示に従い、定期受診しましょう。
休職中の過ごし方や体調の変化などを報告し、継続して治療を受けましょう。
Q4.休職中の職場への連絡は?
休職に入るときに、職場との連絡方法や連絡の頻度を決めておきましょう。
- 職場の連絡窓口は誰なのか?
- 連絡が必要な事項、タイミングは?
- 職場から連絡することは?
といったことを、通常は職場が先導する形で取り決めます。
はじめから多くのことや細かなことを理解する必要はありません。
最低限「連絡窓口は誰か」を理解し、不明な点があれば、後日、その担当者に連絡して確認しましょう。
Q5.休職中は一人暮らしでも大丈夫?
できれば家族のサポートが受けられる実家に帰るほうが良いでしょう。
家族がいれば、食事や生活の支援が受けられ、一人で引きこもりがちにならないという大きなメリットがあります。
どうしても一人暮らしが避けられない場合も、家族や親しい人への連絡はマメに取っておきましょう。
Q6.休職中に単発のアルバイトはしてもいいの?
休職は職場に籍がある状態です。職場が兼業を禁止している場合は、休職中のアルバイトも認められません。
復職へのリハビリとして、短時間のアルバイト(リハビリ就労)を行うケースもあります。
元の職場でリハビリができない環境であれば、他の職場で行うことになりますが、これを職場が認めるか否かは、相談の上ということになるでしょう。
Q7.休職中に資格を取ったり勉強してもいいの?
ここは「資格取得のための休職」ではなく、「心身の不調による休職中に資格取得」というお話です。
休職中の資格取得は禁止されるものではありません。
ただし、勉強や試験が心身の負担とならないように充分に注意しましょう。
Q8.休職中に旅行に行ってもいいの?
「休職中に旅行に行ってはいけない」と職場から言われるケースはないと思いますが、うつなどのメンタルヘルス不調時に、旅行やレジャーでリフレッシュしようとするのは逆効果です。
特に、休職直後は無理な予定を立てたりせず、リハビリや復帰の目途が立った段階で心身の負担のない程度に行いましょう。
Q9.休職中のSNSで注意することは?
休職中にSNSを利用することは悪いことではありません。もちろん禁止もされません。
ただし、旅行に行ったり休みを満喫しているような印象を持たれる投稿をすると、それを見た同僚や上司の反感を買うことがあります。
また、休職に至った事情や職場の不満に関する投稿も、職場の人にとっては気分のいいものではないでしょう。
「(SNSするような)そんな気力があるなら、仕事に戻れるでしょ」と思われないように、職場の人が知らない別アカウントを作るか、投稿そのものを控えるようにしましょう。
看護師の休職に関する疑問~給料・お金について~
Q1.休職中って給料はもらえるの?
休職中は、職場からの給料は一切出ないケースがほとんどです。
Q2.休職中に得られる補償はないの?
休職中に得られる収入には次のものがあります。
●傷病手当
傷病手当は、健康保険組合に申請し給付されるものです。
給料のおよそ3分の2程度の金額が支払われ、最大1年6か月間給付されます。
また、休職中に退職に至ったケースでも所定の期間まで受給を延長できますが、この場合、勤続期間が1年以上あり、健康保険の被保険者期間が1年以上あることが条件となります。
参考:全国健康保険協会(協会けんぽ)病気やケガで会社を休んだとき
●休業補償給付
労災による休職の場合は、労働基準監督署に申請し給付される休業補償給付があります。
ちなみに、育休や介護による「休業」には、雇用保険からの休業給付が支給されます。
Q3.休職中の保険や年金はどうなるの?
休職中も社会保険料の個人負担は継続します。
社会保険料は勤務中は職場と個人(月々の給料から天引き)で折半されていますが、給料が支払われない休職中は、個人負担分を職場に納めなければなりません。
Q4.休職後に退職しても失業手当はもらえるの?
●被保険者期間の延長措置がある
失業手当を受給するためには、退職日以前2年間に被保険者期間が通算して12ヶ月以上必要です。
長期に休職したケースでは、この条件に満たないことがあります。
その場合には、休職期間を加えた期間(最長4年間)まで延長する措置がとられます。
就職後すぐに休職してしまったケースでは、この条件に当てはまりませんが、そうでない場合は、失業手当が受給できます。
●失業手当の受給は「すぐに働けること」が条件
ただし、失業手当はすぐに働ける状態にあることが条件です。
病状が回復しておらず、仕事に就けない場合は受給できません。
この場合には、ハローワークで受給期間の延長手続きを行うことで、最大3年間まで受給期間を延長(先延ばし)することができます。
参考記事:看護師のためのハローワーク失業給付(失業手当・失業保険)の手続きガイド
看護師の休職に関する疑問~復職、転職について~
Q1.元の職場に復帰しないといけないの?
どこに、どのように復帰するかは、本人の希望と主治医の診断、産業医をはじめとする職場のサポートメンバーの話し合いによって決められます。
休職明けの職場復帰は、元々の職場のほうが仕事内容や人間関係の変化が少なく適応しやすいと言われています。
しかし、その職場の上司や同僚のパワハラやイジメが原因であるケースや、その職場ではどうしても避けられない緊張度の高い業務(急患や急変対応)、長時間労働や夜勤がある場合は、別の部署へ配置換えをして復職することが望ましいでしょう。
「元の職場には戻れそうにない」と思う場合は、その気持ちを主治医や産業医に伝えておきましょう。
Q2.復職と退職どっちがいいの?
ですよね。これが最も悩むところでしょう。
休職に至った事情によりますが、症状が落ち着いたことで元の仕事ができそうという意欲があれば「復職」を、働き方や人間関係を根本的に変えなければ働けないと思えば「転職」が良いでしょう。
●復職のメリット
- 仕事や職場環境に慣れているため、復帰がスムーズ
- 顔なじみの中で仕事ができる
- 復職支援プログラムに沿って段階的に復職できる
- 給与や退職金条件が維持できる(休職中の昇給や勤続年数加算はない場合があります)
復職支援プログラムとは、通常業務への復帰までの段階的な就業の仕方や、サポートメンバーの役割を計画化したものです。
●転職のメリット
- 人間関係が一新できる
- 自分に合った働き方ができる職場を選ぶことができる
- 休職していたことの後ろめたさを感じなくていい
復職か退職かの決断は、焦ってはいけません。
症状の回復を待って、落ち着いて考えられるようになってから行いましょう。
Q3.休職しても良くならなかった場合はどうなるの?
休職期間を満了するまでに、症状が改善しなければ、期間満了日付けで退職となります。
Q4.休職期間中に退職するには?
休職期間中に退職の意思を固めた場合は、その旨を職場(休職中の連絡窓口担当者)に伝えましょう。
「いつ付けの退職になるのか」「退職届の提出日は」「職場に返却するものは」といった事務手続きを説明に従って進めましょう。
所属部署や上司へのあいさつは、「状況に応じて」です。パワハラやイジメが原因である場合に、無理に出向く必要はありません。
また、退職については主治医と相談の上決定しましょう。
Q5.休職期間中に転職活動をしてもいいの?
「就業規則」の休職制度のおいて、休職中の転職活動を禁止しているケースはまずないでしょう。
ただし、本来休職は、仕事ができないので休みをとっている期間です。
仕事ができるようになれば「元の職場に復職」というのがスジでしょ!と考える職場もあります。
ただし、「辞める・辞めない」の判断を保留するために「休職」したケースでは、落ち着いて考えられるようになった時点で、「やっぱり退職して転職しよう」という判断になってもおかしなことではありません。
くれぐれも転職活動は「今後のことを考えられるようになってから」ですね。
Q6.休職していた(している)ことは、転職先に伝えるべき?
休職歴を伝えてしまうと「また症状が悪くなると休職してしまうかも」という判断から採用を見送られるケースもあり、好条件で転職しにくいというリスクがあります。
一方、休職歴を伝えずに転職すると即戦力を期待され、休職に至った事情を考慮しない配置や役割負担が課せられる場合があります。
●面接で聞かれたらどうする?
採用側は面接時に病歴を尋ねてはいけないとされています。
ただし、看護師としての業務遂行に関係があると判断されれば尋ねられることもあります。
尋ねられて「ウソ」を申告してしまうと、それがバレた時点で採用を取り消されたり、退職を求められることにつながりかねません。
「尋ねられる」ということは、何らかの懸念を抱かれたと理解し、「本当の理由をきちんと伝える」という姿勢をとったほうが良いでしょう。
●「面接で聞かれなかった」隠して転職するとバレてしまう?
通常は本人が申告しない限り、休職歴が転職先にバレることはありません。
ただし、転職後、その年の年末調整のために「源泉徴収票」の提出を求められたときに、そこに記載されている収入額によって「おや?なぜこんなに少ないの?もしかして……」と思われるケースはあります。
どうしても休職歴を知られたくない場合には、職場の年末調整の処理に間に合わない時期(11月下旬~12月)に転職する方法もあります。
また、最悪「休職歴」がバレても、本当の理由を伝える義務はありません。
メンタルヘルスの不調であっても、「親の介護」という理由にしても問題はありません。
●看護師転職サイトのコンサルタントには伝えるべき?
休職中や休職歴のある看護師の転職活動には、看護師転職サイトの利用がおすすめです。
特に、休職に至った事情を汲んだ転職サポートを希望する場合は、コンサルタントに本当の理由を伝えるべきでしょう。
ただし、休職歴を聞いておきながらハードワークや条件の厳しい職場を勧めるコンサルタントがいないとも限りません。
「信頼がおけそうなコンサルタントだな」と見極めた時点で、休職していること(していたこと)を伝えても遅くはありません。
休職中はいろいろなことが心配になり、社会復帰に焦りを感じがちです。
しかし焦りは禁物です!復帰か転職か、いずれにしてもゆっくりを考えて行動しましょう。
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