「看護師なのに患者さんの死が怖い。」慣れない死との向き合い方と精神的に楽な職場
PRしゅみしゅみ
看護師をしていると、患者さんの死に直面する機会は多くあります。
患者さんの死に直面したとき、あなたはどのように感じますか?その度に、つらく・悲しく・ものすごいストレスに感じる人は多いのではないでしょうか。
私は、総合病院の一般病棟や集中治療室などで、約12年間、看護師をしていました。
今は、結婚を機に専業主婦をしています。この12年間で一度だけ転職の経歴があります。新人看護師のときに働いた病院では約2年弱で退職し、次に転職した病院では約10年間勤務しました。
私が経験した科は、
- 臨床経験1~2年目:消化器内科、呼吸器内科、神経内科、外科
- 臨床経験3~6年目:消化器内科、放射線治療科
- 臨床経験7~10年目:循環器内科、腎臓内科、内分泌科
- 臨床経験11~12年目:集中治療室
でした。
この間、私が患者さんの死に対して、ずっとストレスに感じでいたか?と言えば、そうではありません。
慣れない死との向き合い方と精神的に楽な職場について、私の経験も入れながら、お話ししていきたいと思います。
患者さんの死が怖いと感じた病棟
その1~顔見知りになった患者さんの死~
消化器内科や呼吸器内科の病棟は、がん患者さんが多くいます。
がんの治療で手術では、抗がん剤や放射線の治療があります。手術は外科病棟でするため、内科病棟では抗がん剤や放射線治療が行われます。このような治療は、完治がなかなか難しいです。
初めは検査入院で、そのとき多くの患者さんはまだ元気な姿をしています。
しかし、告知を受けて、人生の終わりのように落ち込む姿を見たり、「私って死ぬのですか?」などと問いかけられたりすることは、看護師にとってもつらく、悲しいものです。どのような受け答えが良いのか頭を悩ませます。
その後、治療のために繰り返される入退院で、顔見知りになった患者さんがいました。
入退院の度に痩せ細っていき、「あぁ…死期が近づいているのかな…」と言うことが、検査データや患者さんの状態からも読み取れてきてしまうものです。
この時点で、既に、看護師にとっても大きな精神的ストレスを感じてしまう人は多いのではないでしょうか。
そして、慣れ親しんだ患者さんの死を迎えた時が最も精神的なストレスを感じます。
- その患者さんにとって良い最期を迎えられただろうか?
- 家族の悔いは残っていないだろうか?
- 看護師として出来ることは全てしてあげられただろうか?
などと考え込んでしまう人は多いと思います。
亡くなってしまった患者さんからは、その答えはありません。正解のない問いをずっと考え込んで落ち込んだ経験がある看護師は多いと思います。
その2~重症患者さんが次々と運ばれてくる集中治療室~
集中治療室では、様々な病気の患者さんが緊急で入院します。重い病気だけでなく、交通事故や崖や屋根から落ちたり、自殺未遂などもあります。年齢も、赤ちゃんからお年寄りまで様々です。
集中治療室(ICU)は、突然の入院であり、ICUにいる期間も短いので、長く入院する病棟のような、顔見知りになった患者さんの死は少ないです。
その患者さん自身の死ということ以上に、残されたご家族が悲しむ姿を見ることは、心に突き刺さるものがあります。
長期間入院する病棟では、患者さんの人柄・今までの生き方や価値観、ご家族との関係など、患者さんの情報が多いため、より感情移入しやすいです。
しかし、そのようなことは知らなくでも、残されたご家族のことを想ったり、そのご家族の立場に立ったりすることは大きなストレスとなります。
また、病状がとてつもなく速く変化していく患者さんでは、看護師の判断はとても重要です。知識や経験がないと、一瞬の判断に遅れて、医師への報告や投薬が遅れたりなどと、命に関わることがあり得ます。
そんな緊張感が続く状態で、看護師の判断ミスではないにしても、患者さんが亡くなってしまったときには、
- 自分の判断が正しかったのだろうか?
- あのときに医師に報告していればもしかしてこの患者さんは死ななかったのではないか?
などと、自分を責めてしまう人もいると思います。
そういった自問自答し、時に自分自身を責めてしまうことが、看護師にとっては大きなストレスです。
どのようにしたら患者さんの死に関わるストレスを克服できるのか
同僚や先輩看護師と情報共有する
亡くなった患者さんやご家族の看護を振り返る機会に、デスカンファレンスというものがあります。患者さんに関わった様々な職種の人たちで意見を交換し合って、今後同じような患者さんがいた場合に、より良いケアを提供できるように、次に活かすための機会です。
話すことで、自分の看護の振り返りも出来ますし、自分だけではなく、周りの人も同じような悩みを持っていたのだと知る機会にもなると思います。
デスカンファレンスをしなくても、話しやすい先輩看護師に聞いてもらうだけでも良いと思います。自分の想いを吐き出し、それを受け止めてもらうだけでも癒しとなることがあります。
また、先輩看護師は、自分よりも長く看護師をしているため、同じように患者さんの死に直面する経験をし、たくさん乗り越えてきた人が多いです。
先輩看護師の話から、悩みを解決するヒントを得ることはたくさんあります。
慣れ
少し不謹慎に思われるかもしれませんが、経験を積むごとに少しずつ慣れていくことは事実です。
人の死に慣れるということは、なんだか冷たい人のように感じてしまうかもしれません。
しかし、そうではなく、患者さんの死、その一つ一つが糧となり、看護師として成長し、次の看護へ活かせるようになったのだと、私は思っています。
ストレス解消法を見つける
心が優しい人ほど、患者さんの死に対しての精神的なダメージは大きいでしょう。
同僚や先輩に話したり、経験を積んでも、ずっと亡くなった患者さんのことを引きずったままの人は、少しだけ仕事から離れてみましょう。
休みの日も仕事の事を考えたり、勉強したりするのも向上心のある素敵な看護婦さんだと思います。
しかし、私はこうして12年間も働き続けることができたのは、on/offをしっかり!をモットーにしてきたからです。
仕事の時間以外は、仕事のことは何もしないというわけではありません。休日に勉強したり、セミナーに参加したり、また仕事の時間外に委員会や係活動などをしたことは多々あります。
それは仕事時間内にすることが難しかったからですが、基本的には、休みの日はプライベートを楽しもう!と趣味の時間に使うことが多かったです。
好きなことをしている時間は、頭の中にある嫌なこともスッとなくなります。好きなことに没頭している時間は、頭の中が切り替えられて、リフレッシュでき、自律神経のバランスも整うからです。
休日を満喫することで、リセットされて、また仕事も頑張れます。on/offしっかりとメリハリのある生活を送ることは、とても大事なことだと思います。
看護師は、あなたが思っている以上に貴重な人材であり、高齢社会では無くてはならない存在です。一時的にものすごく頑張って、燃え尽きてしまうよりも、on/offをしっかり区別して、長く働くことのほうが大切です。
患者さんの死に対してストレスを感じにくかった病棟
病棟によって、その特色が違うため、精神的なストレスの度合いやその内容は変わってきます。
私が働いた病棟の中で、死に対してストレスを感じにくかった病棟ベスト3をあげてみました。
もちろん、患者さんの死はどんな人、どんな場所でも真面目に向き合わなければならないことです。それは変わりませんが、そのあとの周りからのフォローがあるかないかで、看護師が感じるストレスは大きく変わるということです。
ストレスを感じにくかった病棟ベスト3
●第3位:循環器内科
心不全や心筋梗塞などの心臓の病気の患者さんが入院するところです。心臓の病気は、急変しやすく、一見ストレス度が高いように感じるでしょう。
しかし、心臓の病気には基本的に癌はないので、他の病棟と比べて落ち込んでいる患者さんを見ることが少なく、良くなる患者さんもいるため、ストレスは少なかったです。
心不全とは、心臓の機能に何らかの障害があることによって起こる病気のため、完治は難しいことが多いです。しかし、患者さんやご家族と話し合い、生活習慣を見直すことで、悪化させずに過ごしていくことは可能です。
中には、何度も入退院を繰り返して、その度に病状は悪化していき、亡くなる患者さんがいます。そのようなときは、元気な時を知っている方であったり、顔見知りになった方であったりするため、つらく、悲しい想いをします。
しかし、入院したときよりも元気な状態で退院していく姿をみることができる機会も多い病棟です。その点では、患者さんの死を始めとしたストレスは少なかったです。
また、私は生活習慣の指導もやりがいを感じる仕事の一つだったことも理由かもしれません。
●第2位:外科(消化器外科)
お亡くなりになる患者さんよりも、手術で治る患者さんを見ることが多いので、死に対するストレスは少なくなります。
がん患者さんも多くいますが、腸閉塞・胆石・虫垂炎などの消化器系の手術を行う患者さんが入院するところです。
外科病棟の患者さんの多くは、「手術をしたら良くなる!」という希望を持って、治療を受ける方が多いと思います。
手術前は、どんな手術なのか理解してもらったり、手術後の合併症を予防するための訓練など行ったり、患者さんの不安を取り除いたりします。手術後は、傷の処置やリハビリを行います。そして退院前には、日常生活の注意点などの説明をします。
良くなっていく患者さんの経過をみていくことは、とても嬉しく、やりがいになります。
中には、手術後も抗がん剤治療を続けなければならない方や、再発してしまう方もいるため、必ずしも患者さんの死と直面しないというわけではありませんが…
●第1位:内分泌科
糖尿病やホルモンの病気の患者さんが入院するところです。内分泌科の入院患者さんは元気な人が多く、糖尿病に至っては自覚症状がほとんどないことが多く、死と直面する機会は最も少なかったです。
血糖値のコントロールが悪いため入院した患者さんには、生活習慣に何らかの問題があることが多いです。その患者さんの生活習慣を見直すために、教育入院を行います。
内分泌科の入院の大半は、教育入院であるため、看護の中心は、患者さんの生活指導となります。糖尿病は、完治しませんが、進行して合併症を起こさないための生活習慣がとても大切です。
糖尿病が進んでしまうと、腎不全や心筋梗塞、脳梗塞などと起こす方もいますが、その場合には、それぞれの専門の病棟に入院となります。
~番外編~
働いたことのない病棟でも、ICUで関わったことがある患者さんは多くいます。その他にも、実習で行った病棟や同僚から聞いた情報から、私が思う、死に対してストレスを感じにくいであろう病棟を紹介します。
●整形外科
骨折で入院する患者さんが多く、死に直結した病気で入院する患者さんは少ないと思います。中には、脊髄損傷など完治が難しい病気の患者さんもいますが…
しかし、骨折の場合は、傷の痛みは日がたてば良くなり、リハビリを頑張ることでまた元の状態に戻ることも多いです。
悪性の病気や、進行していく病気に比べると、患者さんの気持ちも前向きで明るいことも多いと思います。
●眼科
白内障・網膜剥離などの目の手術を受ける患者さんが入院するところです。目の病気には、まぶたや皮脂腺にできる悪性のがんもありますが、かなり稀です。
基本的には、良性の病気の手術目的の入院が多いため、死と直面する機会はかなり少ないと思います。
●産婦人科
産科は、妊婦さんや産婦さんばかりなので、死に直面する機会は少なくなります。しかし、婦人科の病気では、子宮がん・乳がんなどの死に直面する機会があります。
死への悲しみの反面、新しい命を迎える病棟であるため、喜びもあるのではないでしょうか。
●クリニックなどの外来
患者さんがお亡くなりになる場所は病棟や、老人ホーム、自宅が多いです。
今まで、病棟で死に直面する機会が少ないものをあげてきましたが、クリニックの外来であれば、入院施設のある病院よりその機会は少なくなります。
●デイサービス
病院ではありませんが、デイサービスでも看護師は働けます。
デイサービスでは、持病がある人は来ても、治療に来る人はいません。万が一、具合が悪くなっても、病院にかかってもらえば良いのです。病院より、より死に直面する機会は少なくなりますね。
どうしても患者さんの死が怖いなら、転職も一つの手段
患者さんの死が怖いという気持ちは、慣れや周りの先輩、同僚と話すことで和らぐことがあります。
しかし、どうしても患者さんの死が怖いのであれば、病棟や職場を変えることも一つの手段です。
総合病院の場合、部署を変更すれば解決することもありますが、なかなか希望は叶わないものです。
でも、在職中に、ハローワークに通ったりすることは、今の職場の人に知られたら気まずいなという感じる人もいるでしょう。
転職サイトであれば、周りの人に気づかれることなく、自分の希望に沿った職場を探すことができます。情報量もハローワークや求人情報誌より多いため、年々利用者も増えています。無料登録できることも、人気の理由の一つですね。
あなたに合った職場を探し、できるだけあなたのストレスが軽減して、長く、楽しく看護師を続けられることを願っています。
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登場人物
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