整形外科で働く看護師の仕事内容~処置の内容と看護師の役割~
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そうなんです。一般的な整形外科のイメージとして、レントゲン取って湿布くれるくらい…という方は多いようです。
しかし、実際に転職してみると整形外科で行う治療や処置の多さに驚くかもしれません。あらゆる方法で、患者の苦痛を取り除こうと試みているんですね。
覚えることも多いですが、それによって患者の苦痛が良くなっていく事が多く成果が見えやすいため、看護師としてもやりがいのある診療科といえます。
前回は整形外科とはどんな診療科なのかをご紹介しましたが、そこで働く看護師の仕事とは、どのようなものなのでしょうか。今回は整形外科で働く看護師について詳しく解説していきます。
外傷全般に対する処置
体表面からの傷や疾患の治療は、ほとんど整形外科で行います。処置はバラエティにとんでいて、経験のある看護師でも追及しがいがありますよ。
少し深めに切ってしまったような切創、ギザギザと複雑な擦過傷など傷の処置は整形外科が対応します。(頭部外傷に関しては、脳外科が行うことが多い)。
整形外科医は、神経や筋肉の走行に従って、また表面上も綺麗に縫合・形成する方法を学んできています。
やや地味な処置ですが実は整形外科医の腕の見せ所で、複雑な傷も綺麗に縫合する手技はなかなか見ごたえがありますし、患者にも感謝されるものです。
看護師は
- 麻酔や縫合に関する清潔操作の介助
- 医師が縫合しやすいような体位の工夫
- 鎮痛剤などの指示を仰ぎ実施
をします。
医師は傷しか見えませんので、痛みを伴っている患者の観察は大切です。(時々特に若い方でショックを起こす人もいるのです!)
患部の固定処置
骨折や捻挫、脱臼に関して患部を固定することで、治癒するまで良肢位をキープします。
ギプス・シーネ・弾包・コルセット、その関節特有の固定具など固定の道具はたくさんあり症状やその部位を見て医師が決めます。
看護師は
- 固定の介助
- 固定後の神経障害の有無のチェック
- 固定後の生活の仕方
- トラブルに対するセルフチェックの指導
などを行います。
一昼夜ずれることない包帯の巻き方は、基本の巻き方+看護師のセンスです。うまく巻けた時は見た目も綺麗に保てるだけでなく、実は患者も不要な痛みが無いのです。
鎮痛処置
整形外科の疾患はほとんど「痛み」を伴うものです。患者はその痛み、しびれといった不快症状をとって欲しくて来院しますよね。
苦痛の除去が全てのスタート
整形外科にとって除痛、鎮痛処置ははじめの一歩です。
その後、手術やリハビリなど苦痛の大きい処置があっても、整形外科にかかることで痛みがとれたり、また痛みの訴えをよく聞いてくれたりすると、そういった処置に前向きになれることが多いのです。
患者側は診断結果も大事ですが、まずは苦痛を取ってほしいのです。患者の訴えや一番の苦痛が置いてきぼりにならないように、看護師は患者の言葉や表情をしっかり拾っていきましょう。
訴えをきちんと聞いてくれる、と思ってもらえれば後の処置やリハビリがぐっとスムーズに進むということも多いものです。
痛みに対する考え方を共有する
鎮痛処置というのは、意外と難しいもので「痛いから痛みどめ」というだけではありません。
炎症の急性期などは痛みを我慢する必要は無く、しっかり鎮痛処置をして患者の苦痛を取るべきです。ただ、慢性疼痛に関しての鎮痛は、その人その人に合わせて工夫が必要です。
そうですね。患者は整形外科すぐに痛みをとって欲しいものですよね。『かきたろう』さんの言う、気長な鎮痛対策というのは、よほど必要性を理解していないとできないものです。
すぐ痛みが取れない時、患者はモチベーションを保てない時もありますね。
一つ一つのリハビリなどに「何故必要なのか」をよく説明し、その成果を伝えてモチベーションアップする声かけも大事です。
患者は自覚していなくても、リハビリの効果で自然と背中が伸びていたり、歩行が安定するようになってきたらそれを伝えましょう。
すぐに効果が見えない一つ一つのことが鎮痛に繋がっていることを伝え、痛みに対する考え方を共有していきます。
その痛みに対する処置は、内服や注射、また硬膜外麻酔などがあり、痛みの部位や原因と程度などによって医師が判断します。
●関節内注射
関節内注射は膝や肩などの痛みに対してヒアルロン酸などを局注するのですが、関節腔内に注射することから清潔操作が必要です。
その後の入浴禁止なども指導していきます。
●硬膜外麻酔
腰痛症などに対する硬膜外麻酔は、整形外科か麻酔科で行います。
看護師は
- 清潔操作の介助
- 体位の固定
- トラブルの早期発見
に努めます。硬膜外麻酔は、その注射の位置決めが非常に難しいのです。位置をしっかり決めるため、特殊な体位をとります。
それでも、個人差もあり下肢のしびれやふらつきなどのトラブルが起きやすい処置です。
看護師は不安定な患者の体位をしっかりと固定して、医師が正しい位置に注射できるように介助しましょう。また、患者の見えない部分を口頭を伝えたり、不安を取り除くような声かけが必要ですね。
けん引術
圧迫骨折を含む骨折の治療の際、部位の整復と固定をして良肢位での治癒を目指す時に行います。直接けん引と介達けん引とありますが、これが効果的に施行されているか常にチェックします。
けん引の準備でやぐらを組んだりするのはちょっとした大工仕事の様ですが、整形外科全般がそういった体力仕事が多いかもしれませんね。
リハビリ
痛みを取る処置の効果が出てきたら、リハビリへ移行します。これはリハビリ科と連携して行うことになりますが、30分から1時間程度のリハビリだけではなく、病棟でもできるだけ動かしていかないといけません。
設備が整って、専門家がついてくれているリハビリ室では有効な運動が出来ても、病棟に戻るとできなかったり寝てばっかり…というのはよくあるパターンです。
それは、そのまま退院した後のその患者さんの姿かもしれません。病棟でも積極的に動いている人は、自宅に戻っても教わったリハビリを必死にするものでしょう。
そこで、リハビリ室でのリハビリだけでなく病棟でも続けるのは、退院後のためにもとても大切です。自宅での生活を思い描きながら、一人で、もしくは家族とできることを見つけていきましょう。
看護師は直接的なリハビリの介助と共に、患者がどうしてリハビリをしなくてはいけないかの動機づけも必要です。
整形外科の疾患は、患者自身が動いて筋肉を鍛えて治すものです。「患者のやる気」が非常に重要なのです。
安静とリハビリ
整形外科疾患の急性期は安静が必要です。痛み=炎症が起きていることですから、無理に動かすと炎症が広がってしまいます。そこで、安静にして炎症を落ち着かせて動き出すわけですが、これも危険があるのです。
そこで、安静期間中も動かせる四肢は動かしたり、弾性ストッキングを活用したりして血液の流れを滞らせないことは、整形外科の看護師の基本です。
また、初めての座位や立位など動き出す時が最も危険なので、決して目を離さず離床を進めていきましょう。
手術
主に骨折、変形性股関節症、変形性膝関節症、頚椎症や脊髄症、脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニアなどの疾患に対する手術があります。
整形外科の手術は、どの疾患においても最終的に選択されることが多いですね。それだけ、絶対的に清潔であるべき骨と、複雑に走行する神経に対する手術のリスクは高いのです。
日常生活支援
整形外科疾患やその治療により、今までと同様の生活が送れなくなった場合や、再発予防のための日常生活指導を行います。
患者の今までの生活から改善しなくてはいけないことを一緒に話し合い、また時には家屋改造なども必要なことがあります。リハビリ科と連携して、その患者や家族ができることを見つけていきます。
認知症対策
整形外科で入院して安静など不自由な治療があると、高齢者は認知症を発症することは多くの症例であります。
程度の差は有りますが「痛くて動けなかった人が気づいたら後ろに立ってた」「徘徊してた」などで息をのむようなことは、本当に稀ではないのです。
認知症による事故防止対策は、できるだけ抑制しなくて済むようにセンサーマットなどいろいろ出ています。
認知症対策は奥の深い問題です。認知症は病気であり、患者も不安であることを理解してお互いに傷つけあわないようなプロフェッショナルな心構えが必要でしょう。
整形外科疾患の治療の成果は退院後に!
整形外科疾患に関して大切なことは、治療の成果はその後の生活に現れるということです。
整形外科の看護師の仕事は治療やリハビリの動機づけを行い、成果を共有することで患者が治療に積極的になれることが重要なウェイトを占めます。
個々を尊重しバラエティに富んだ、自分自身の個性も活かせるような看護が展開できるのではないでしょうか。
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登場人物
のんびりな性格の新人ナース。2人の姉の影響で看護師に。色々なことに疎く、生き方もなぁなぁ。
キャリア志向のナース。趣味はセミナー巡り。大の血管好きで血管愛好家という一面も。
仕事と子育ての両立に励むママナース。2児の母。三姉妹の中で最もおっとりした性格。
みんなに愛されるダンディな開業医。頭から生えてきた額帯鏡がチャーミング。
仕事も男も経験豊富なベテラン看護師。数多の男を落としてきた美脚は今なお衰えていない。
犬か猫かどっちか分からない正体不明のペット。自分もナースだと思い込んでいる。